一分銀の魅力は、その「不完全さ」にある。
手作業で作られた極印(金型)は、一つとして同じものはない。
文字のハネが少し大きい「ハネ分」。
点が玉のように丸い「玉座」。
これらは「手替わり」と呼ばれ、収集家の心を掴んで離さない。
代表的な手替わり:
- 長柱座(ちょうちゅうざ):「座」の柱が長く伸びる天保の変種。
- 玉座(ぎょくざ):「座」に玉ごとき点が宿る安政の希少種。
- 交叉是(こうさせ):「是」の画が交わる、職人の遊び心か。
それはまるで、200年前の職人が残した暗号。
歴史はミステリーであり、
正解のない問いを愛でることもまた、一興である。